有機合成のための新反応の開発

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教官名:

九州大学大学院理学研究院
准教授(化学部門有機化学系)

819-0395
福岡市西区元岡744
電話092-802-4142
yito のあとに@chem.kyushu-univ.jp

趣味:ミニ園芸,野山、海辺の散策

研究テーマ:

 ・ヘテロ環状化合物の特性を利用した高立体選択的反応の開発

 ・環境応答型インテリジェント触媒の開発

 ・キラルクレフト構造を有する不斉触媒の開発

研究室のモットー: 創意工夫に努め,精一杯努力しよう。

学生さんへ一言: 毎日しっかりと計画をたて、テキパキとやるべきことをきちんとやり遂げよう。

研究体制

 私達の研究室は、九州大学大学院理学研究院化学部門有機・生物化学講座物性有機化学研究室で、概念的にも新しい有機合成反応の開発を目指した研究を行っています。また、光物性や機能性錯体の合成研究も行っています。

研究環境

 実験設備としては核磁気共鳴分光器(NMR)、高速液体クロマトグラフ分析装置(LC)、ガスクロマトグラフ分析装置(GC)、赤外線分光装置(IR)、紫外可視分光装置(UV)など通常の有機合成化学の研究をする上で必要な分析装置はほとんど揃っており自由に使用することができます。また、元素分析は元素分析センターに依頼します。

研究概要 

 主な研究テーマは、立体選択的合成法に新しい概念を導入することです。単に、従来の研究成果を改良するような研究ではなく、概念的にも新しい独自の立体制御法の開発を目指しています。最近では特に立体特異性に関する研究、環境に応じて変化する触媒の開発研究、深いキラルなクレフト構造を有する不斉触媒の開発研究を中心に行っています。

大学院生募集

大学院へ進学希望の方は歓迎します。大学院の入試要項などは化学科のホームページに掲載されていますが、研究室見学などは随時受け付けていますのでお気軽にお問い合わせ下さい。

819-0395
福岡市西区元岡744
電話092-802-4142
物性有機化学 伊藤芳雄
電話092-802-4142
メール yito の後に @chem.kyushu-univ.jp

 

授業関連

教職に関する科目「総合演習_化学物質と人間」において、簡単な分子模型の作り方を紹介しました。詳しくはをこちらを御覧下さい。

少人数ゼミナールで簡易旋光計を作成しました。詳しくはこちらを御覧下さい。

 

ヘテロ環状化合物の特性を利用した高立体選択的反応の開発

 光学異性体による生理活性の違いなどが明らかになるに伴って、医薬品をはじめ様々な化合物は純粋な光学活性体として合成されることが不可欠となっており、合成反応における立体化学の制御は有機化学における最重要テーマの一つである。世界中でこの問題に取り組んだ結果、ここ二十年程の間に優れた立体制御法がいくつも見出されてるようになった。このような今日の有機合成化学において解決すべき課題は、新反応の発見や不斉収率のさらなる向上とともに環境保全へも配慮した反応の開発であろう。そのためには、用いる触媒の活性を向上させその使用量を減らすこと、安全で副生成物が少ない反応剤の開発が重要である。また、原料の多様性に適応した合成反応の開発も重要であろう。即ち、これまでの研究では単一原料から単一の生成物を合成することに主眼が置かれていたが、数種の原料の混合物からでも単一の生成物が得られれば、より広範な原料が利用可能になり資源の有効活用が期待される。当研究室ではこのような反応として、原料の立体化学に依存しない立体制御法を見いだした。α,β-不飽和アミドの立体選択的アジリジン化にジアジリジンを用いると、基質の立体化学に依存しない生成物の幾何異性の作りわけ、つまり反応剤による立体制御が可能となった(下図参照)

 この反応の生成物であるアジリジンには、シス体、トランス体の二種類の立体異性体がある。その生成比は用いる原料のシス、トランス異性体比には関係なく、どちらの原料からもトランス体あるいはシス体の一方を選択的に合成できた。つまり、反応剤のジアジリジンの3位置換基の数が重要で、一置換体ではトランス体が、ニ置換体ではシス体が生成する。この特異な選択性を解明するために、光学活性なジアジリジンを用いた不斉反応と溶媒効果を検討したところ、ジアジリジンがα,β-不飽和アミドへ1,4-付加してエノラート中間体が生成する際のジアステレオ選択性が生成物の立体化学に反映されていること、そして、続くアジリジンへの閉環反応においてリチウムイオンへのキレート構造の保持が重要であることが判明した。

以下の論文に詳細が記されています(英文)。 >>> 日本語の概要aziridination.htm

  1. H. Ishihara, K. Hori, H. Sugihara, Y. N. Ito, and T. Katsuki, Helv. Chim. Acta, 85, 4272 (2002).
  2. H. Ishihara, Y. N. Ito, T. Katsuki, Chem. Lett., 984-985, (2001).
  3. K. Hori, H. Sugihara, Y. N. Ito, T. Katsuki, Tetrahedron Lett., 40, 5207-5210 (1999).

 

環境応答型インテリジェント触媒の開発

 光学活性なサレン金属錯体は様々な反応において高い不斉誘起能を示す極めて優れた不斉触媒であることがみいだされている。その不斉誘起の機構についてはいろいろと議論されているが、サレン骨格の非平面性が一つの重要な要因となっていることがアキラルなサレン錯体とキラルな軸配位子とを用いる不斉エポキシ化やカルボキシル基を導入したサレン錯体を用いた不斉エポキシ化で示されている。Y. N. Ito and T.. Katsuki, Tetrahedron Lett., 39, 4325-4328 (1998). T. Hashihayata, Y. N. Ito, and T. Katsuki, Tetrahedron 53 (28), 9541-9552 (1997).

 我々は、カルボキシル基が分子内で中心金属イオンに配位するかどうかで錯体の立体配座が反転していると考えられる点に着目して新しい錯体を設計している。適当な官能基を適当な位置に添加したものを合成すれば従来にない触媒活性を示すことが期待されるし、反応溶液中でpHや添加剤の影響で反応性の異なる触媒として作用することも考えられる。反応環境に応じて触媒活性をスイッチするインテリジェント触媒とでも言えるような触媒の開発を目指している。

 

キラルクレフト構造を有する不斉触媒の開発

 

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