九州大学大学院 博士課程リーディングプログラム 分子システムデバイスコース

九州大学理学部化学科

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学科長挨拶

 

 未知と浪漫にあふれる化学の世界

 

 私たちの身の回りは、化学であふれています。私たちの世界に存在する物質は、原子、小分子、高分子、生体高分子などが様々な階層で集積してできています。このような物質の性質や振る舞いを、ナノ(10億分の1メートル)の世界から、フラスコの中、地球そして宇宙にいたるまで、幅広いスケールで探究する学問が化学です。私たちの体の中で起きている現象は、全てが高度な化学現象の集大成です。日頃何気なく使っているものにも、たくさんの化学が詰まっています。例えば、エネルギーの観点では、原油の精製,カーボンニュートラル社会の実現に向けた太陽電池・燃料電池、省エネルギーの LED 照明など、化学の深化と発展が現代の豊かな生活の基盤を支えています。しかし、世の中が便利になっても、自分の体内ですら未知の事象が数多く存在し、解決すべき課題が山積しています。新型コロナ感染症は、人類に大きな課題を突き付け、これまでの世界を一変させました。現代の科学技術・先端知識を結集させても、この3年間余りの期間では解決することはできませんでした。正にリアルタイムで未知への挑戦が進行しており、さらなる化学(科学)の発展が求められています。

 一方で、化学(科学)には大きな浪漫があります。人類未踏の知の開拓はもちろんのこと、時を越える浪漫もあります。科学は人類の英知が積み重ねられたもので、最先端の研究の中にも先人達が発見した原理や合成法などが脈々と息づき、後世の研究に遺伝子のように組み込まれています。私は金属錯体を集積させた配位高分子について研究していますが、元を辿ると1704年に発見されたプルシアンブルー (PB) と呼ばれる青色顔料に行き着きます。この顔料はゴッホや葛飾北斎など著名な画家が好んで使ったことで知られていますが、当時は構造がわからない化合物でした。20世紀になって、PB はシアン化物イオンが鉄イオンをつないだ三次元の無限構造をもつ化合物であり、ユニークかつ多様な性質を示すことが明らかとなりました。そして現在では、顔料に限らず、放射性セシウム吸着材や二次電池用電極、バイオセンサー、光磁気材料など、様々な分野で PB の基礎および応用研究が展開されています。温故知新と言いますが、300年の時を越えて現在でも研究される化合物には、驚きとともに浪漫を感じます。皆さんが行う研究からも、このような時を越える成果が生まれるかもしれません。九州大学の理学部化学科で、未来に思いを馳せつつ、未知にあふれる化学の世界を皆さんと共に歩む日を、楽しみにしています。

化学科長 大場正昭

 

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