▶K. Morooka, E. Kurihara, M. Takehara, R. Takami, K. Fueda, K. Horie, M.
Takehara, S. Yamasaki, T. Ohnuki, B. Grambow, G.T.W. Law, J.W.L. Ang, W.R.
Bower, J. Parker, R.C. Ewing, S. Utsunomiya,
New Highly Radioactive Particles Derived from Fukushima Daiichi Reactor Unit 1:
Properties and Environmental Impacts, Science of The Total Environment, (2021)
145639, https://doi.org/10.1016/j.scitotenv.2021.145639.
福島第一原子力発電所(FDNPP)の北北西、双葉町に向かって伸びる汚染領域には、1号機から放出された高濃度の放射性粒子が含まれています。これらの粒子の生理化学的特性や環境への影響については不明な点が残されています。本研究では、FDNPPの北北西3.9kmで採取した表層土壌から31個の放射性粒子を分離しました。これらのうち2つの粒子は、福島で報告されたこれまでで最も高い134+137Cs放射能を有していました(2011年3月までの減衰補正後、粒子あたり6.1×105及び2.5×106Bq)。FTB1とラベリングされた新しい高放射性粒子は、0.8 wt.%程度のCsを含む非晶質構造を持つ葉片状の珪酸塩ナノ粒子の集合体であり、SiO2とTiO2の内包物を含んでいます。FTB1は、揮発したCsを吸着した後に水素爆発で損傷した原子炉建屋構造物に由来していると推測されます。FTB26と名付けられたもう一つの高放射性粒子の134+137Cs放射能は106Bqを超えていました。FTB26は非晶質ガラス状の炭素コアと多数の微小粒子(Pb-Sn合金、繊維状のAl-ケイ酸塩、Ca-炭酸塩又は水酸化物、及び石英)が埋め込まれた表面を有しています。微小粒子の同位体比は、Bによる中性子捕獲,Csの揮発,天然Baの吸着を示しました。FTB26上の微粒子の組成は、水素爆発時の空気中の微粒子の組成を反映していると考えられます。高放射性粒子はその大きさから、健康への影響は皮膚との静的接触でおこる外部被爆に限られており、人体への影響はほとんどないと考えられます。高放射性粒子の動態を調べることで、1号機の影響を受けた環境で放射線量がどのように移動していくのかをより正確に理解することができます。また、高放射性粒子は、1号機爆発時の建屋内雰囲気や原子炉溶融時の物理的科学的現象の解明にも役立ちます。
共著論文
T. Ikenoue, M. Takehara, K. Morooka, E. Kurihara, R. Takami, N. Ishii,
N. Kudo, & S. Utsunomiya, Occurrence of highly radioactive microparticles
in the seafloor sediment from the pacific coast 35 km northeast of the
Fukushima Daiichi nuclear power plant. Chemosphere, 267 (2021)
128907.
https://doi.org/10.1016/j.chemosphere.2020.128907
共著論文
K. Murota, K. Tanoi, A. Ochiai, S. Utsunomiya, & T. Saito, Desorption
mechanisms of cesium from illite and vermiculite. Applied
Geochemistry, 123 (2020)
104768. https://doi.org/10.1016/j.apgeochem.2020.104768
▶E. Kurihara, M. Takehara, M. Suetake, R. Ikehara, T. Komiya, K. Morooka, R. Takami, S. Yamasaki, T. Ohnuki, K. Horie, M. Takehara, G.T.W. Law, W. Bower, J. Frederick W. Mosselmans, P. Warnicke, B. Grambow, R. C. Ewing, & S. Utsunomiya, Particulate plutonium released from the Fukushima Daiichi meltdowns. Science of The Total Environment 743 (2020) 140539. https://doi.org/10.1016/j.scitotenv.2020.140539
▶R. Ikehara,* K. Morooka,* M. Suetake, T. Komiya, E. Kurihara, M. Takehara, R. Takami, C. Kino, K. Horie, M. Takehara, S. Yamasaki, T. Ohnuki, G. T. W. Law, W. Bower, B. Grambow, R. C. Ewing, & S. Utsunomiya, Abundance and distribution of radioactive cesium-rich microparticles released from the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant into the environment. Chemosphere 241(2020) 125019. * Two authors contributed equally. https://doi.org/10.1016/j.chemosphere.2019.125019
▶S. Utsunomiya, G. Furuki, A. Ochiai, S. Yamasaki, K. Nanba, B. Grambow,
& R. C. Ewing, Caesium fallout in Tokyo on 15th March, 2011 is dominated
by highly radioactive, caesium-rich microparticles. ArXiv, (2019) 1906.00212.
福島第一原発から放出された高濃度放射性セシウム含有微粒子(CsMP)は遠く関東地方まで到達しました。本研究では東京で採取したCsMPを高分解能透過電子顕微鏡(HRTEM)を用いて原子レベルで分析し、エアフィルターを用いて溶解実験を行いました。2011年3月15日のフィルターでは0.58 – 2.0 μmの大きさのCsMPが全Cs放射能の80 % - 89 %を占めていました。東京と福島のCsMPは、ナノスケールでは同じ組織を示しました。東京で発見されたCsMP(0.55 – 10.9 wt.%)のCs濃度は、福島で発見された粒子(8.5-12.9 wt.%)よりも低くなりましたが、東京で発見されたCsMPの単位質量あたりの放射能は〜1011 Bq/gと高くなっています。したがって、低溶解度のCsMPを吸入した場合、β線(CsMP表面の厚さ100 μmの水層内で0.51 - 12×10-3 Gy/h)による高い局所的なエネルギー蓄積をもたらし、可溶性Cs種の場合と比較して長期的な影響を及ぼす可能性があります。
▶M. Suetake, Y. Nakano, G. Furuki, A. Ochiai, R. Ikehara, T. Komiya, E. Kurihara, K. Morooka, S. Yamasaki, T. Ohnuki, K. Horie, M. Takehara, G. T. W. Law, W. Bower, B. Grambow, R. C. Ewing, & S. Utsunomiya, Dissolution of radioactive, cesium-rich microparticles released from the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant in simulated lung fluid, pure-water, and seawater. Chemosphere 233 (2019) 633-644. DOI: 10.1016/j.chemosphere.2019.05.248
福島第一原子力発電所から放出された高濃度放射性セシウム含有微粒子(CsMP)の溶解挙動を理解するために、福島県の土壌から分離されたCsMP(137Cs放射能が108 Bqと57.8 Bq)に対して、模擬肺液、超純水、人工海水の3種類の溶液を用いて、25、37 ℃で1 – 63日間、系統的な溶解実験を初めて行いました。137Csは3日以内に急速に放出され、その後、各溶液で定常溶解状態に達しました。模擬肺液、超純水、人工海水について、25 ℃における137Csの定常放出速度は、それぞれ4.7 × 103、1.3 × 103、1.3 × 103 Bq・m-2s-1であると求められました。このことは、模擬肺液がCsMPの溶解を促進していることを示しています。CsMPの溶解速度はケイ酸質ガラスとほぼ同等であり、Csの放出は、ケイ酸の溶脱が律速しています。この溶解速度をもとに、2 Bq程度のCsMPが吸入されて肺胞領域に沈着した場合、溶けるまでに35年以上の時間をようすると計算されました。CsMPは数十年にわたって環境中に存在する可能性があり、環境中の放射性Csの長期的な影響に寄与する重要な因子となります。
▶R. Ikehara, M. Suetake, T. Komiya, G. Furuki, A. Ochiai, S. Yamasaki,
W. Bower, G. Law, T. Ohnuki, B. Grambow, R. C. Ewing, & S. Utsunomiya,
Novel method to quantify radioactive cesium-rich microparticles (CsMPs)
in the environment from the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant. Environmental
Science & Technology, 52 (2018) 6390-6398 DOI: 10.1021/acs.est.7b06693.
2011年3月の原子力災害の初期段階で、福島第一原子力発電所から高濃度放射性セシウム含有微粒子(CsMP)が周辺環境に放出されましたが、放出されたCsMPの量は正確には分かっていませんでした。本研究では、オートラジオグラフィを用いて、福島周辺の表土中のCsMPの数とその寄与率を定量する新しい方法を開発しました。ここでは、光刺激ルミネセンス(PSL)は様々な微粒子の放射能と線形の相関を示し、回帰係数は0.0523 Bq/PSL/hと算出されました。福島県長泥から採取した土壌では、114 μmメッシュでふるいにかけた土壌からほぼすべてのCsMPが検出されました。定量されたCsMPの放射能ヒストグラムから、CsMP同定のための基準を114 μm未満かつ放射能しきい値0.06 Bqと決めました。この方法に基づき、FDNPP周辺から採取した4つの表層土壌中のCsMPの粒子数及び放射能割合は、それぞれ1 gあたり48 - 318粒子及び8.53
- 31.8%と算出されました。この新しく開発されたQCP法は、約106 Bq/kgの高い放射能を持つ土壌に適用可能です。QCP法は福島周辺の地表環境における高放射性CsMPの分布と移行を定量的に把握する上で非常に重要な手法になると考えられます。
▶A. Ochiai, J. Imoto, M. Suetake, T. Komiya, G. Furuki, R. Ikehara, S.
Yamasaki, G. Law, T. Ohnuki, B. Grambow, R. C. Ewing, & S. Utsunomiya,
Uranium dioxides and debris fragments released to the environment with
cesium-rich microparticles from the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant. Environmental
Science & Technology, 52 (2018) 2586-2594, DOI: 10.1021/acs.est.7b06309
福島第一原子力発電所(FDNPP)のメルトダウンに伴い、微量のUが環境中に放出されましたが、放出された核燃料成分の化学状態は明らかになっていませんでした。本研究では、福島第一原子力発電所から環境中に放出された核燃料のナノ粒子の原子レベルでの特性を初めて報告しました。試料はFDNPPから約4 km離れた水田土壌から採取し、その中から高濃度放射性セシウム含有微粒子(CsMP)が見つかりました。さらに透過電子顕微鏡を用いてこれらCsMPとウラン酸化物ナノ粒子が共存していることを発見しました。ウラン酸化物つまり核燃料のナノ粒子は、CsMPに包まれているか、CsMPに付着している状態で存在するとともに、2つの異なる化学形態をとっていましあt。(i)サイズが約70nmの二酸化ウランナノ結晶は、表面にTcとMoを含むマグネタイトに埋め込まれており、(ii)サイズが約200 nmの立方晶(U,Zr)酸化物共晶は、U/(U+Zr)モル比が0.14から0.91の範囲であり、結晶化中の蒸気や核分裂生成ガスの巻き込みを示していました(約6 nm)。これらの結果は、溶融燃料と原子炉材料の混合物であるナノスケールのデブリの物理的及び化学的特性が不均質であることを示しており、メルトダウン時のFDNPP原子炉内の複雑な熱プロセスを反映しています。また、CsMPはデブリの破片を吸入可能な形で環境中に輸送する重要な媒体になっていると言えます。
共著論文
X. Yin, N. Horiuchi, S. Utsunomiya, A. Ochiai, H. Takahashi, Y. Inaba, X.
Wang, T. Ohnuki, & K. Takeshita, Effective and efficient desorption of Cs
from hydrothermal-treated clay minerals for the decontamination of Fukushima
radioactive soil. Chemical Engineering Journal 333 (2018)
392-401.
▶J. Imoto*, A. Ochiai*, G. Furuki, M. Suetake, R. Ikehara, K. Horie, M. Takehara, S. Yamasaki, K. Nanba, T. Ohnuki, G. T. W. Law, B. Grambow, R. C. Ewing, & S. Utsunomiya. Isotopic signature and nano-texture of cesium-rich micro-particles: Release of uranium and fission products from the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant. Scientific Reports, 7 (2017) 5409 | DOI:10.1038/s41598-017-05910-z. *Two authors contributed equally.
福島第一原子力発電所(FDNPP)から放出された高濃度放射性セシウム含有微粒子(CsMP)は、内部に化学的痕跡を残しています。本研究ではFDNPPから10 km圏内から発見された3つのCsMP(3.79 – 780 Bq)について、U, Cs, Ba, Rb, K, Caの同位体比を測定し、CsMPの起源と生成メカニズムを明らかにしました。まずこれらのCsMPには最大30 wt.%のCsと1 wt.%のUが含まれていました。2つのCsMPにおける235U/238U同位体比は0.030(±0.005)と0.029(±0.003)と決定され、これらの値はORIGENコードで推定された福島第一原発で使われていたウランの平均燃焼度よりも高く、未使用の核燃料中ウランの同位体比よりも低いことから、燃焼度の異なる溶融燃料からUが不均一に揮発したことを示唆しています。本研究ではナノスケール分析と同位体分析から、メルトダウン中に燃料中で起こった化学反応の一部を記録することができました。また、CsMPは放出された放射性核種の輸送媒体として重要な役割を果たしていることが分かります。
共著論文
X. B. Yin, L. Zhang, A. Ochiai, S. Utsunomiya, H. Takahashi, T. Ohnuki,
& K. Takeshita. Effect of temperature on K+ and Mg2+ extracted
desorption of Cs from vermiculitized biotite, Chemistry
Letters, 46 (2017) 1350–1352 | doi:10.1246/cl.170551.
▶ S. Yamasaki, J. Imoto, G. Furuki, A. Ochiai, T. Ohnuki, K. Sueki, K. Nanba, R. C. Ewing, & S. Utsunomiya, Radioactive Cs in the estuary sediments near Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant. Science of the Total Environment, 551-552 (2016) 155-162.
▶M.
Kaneko, H. Iwata, H. Shiotsu, S. Masaki, Y. Kawamoto, S. Yamasaki, Y.
Nakamatsu, J. Imoto, G. Furuki, A. Ochiai, K. Nanba, T. Ohnuki, R. C. Ewing
& S. Utsunomiya, Radioactive Cs in the severely contaminated soils near the
Fukushima Daiichi nuclear power plant. Frontiers in
Energy Research 3:37. doi: 10.3389/fenrg.2015.00037.
▶H. Iwata, H. Shiotsu, M. Kaneko, & S. Utsunomiya. Nuclear accidents
in Fukushima, Japan and exploration of effective decontaminant for the 137Cs-contaminated soils. In Advances
in Nuclear Fuel (ed. Shripad T. Revankar)
p123-142, Intech 2012.