分光分析化学研究室での研究・生活紹介
当研究室への進学や、研究員としての参画を考えている方への情報を集めた特設ページです。文責:宮田潔志
分光分析化学研究室は、超高速分光の技術を軸に広く光化学に関係する研究を行っています。研究の大雑把な雰囲気や、以下をご参照ください。宮田が一般向けに講演した講演動画等もご参照ください。
公募情報:博士研究員
国際先導研究「先端材料化学と量子物性物理の融合による量子分子エレクトロニクスの創製」(令和5‐11年度)において恩田グループに所属し、超高速分光技術を用いた有機エレクトロニクスデバイスの計測と原理解明に関する研究を担って頂ける研究員を募集いたします。なお本プロジェクトでは海外のグループへ長期滞在しての共同研究も行って頂きます。海外経験を積む機会を求めている方の積極的な応募を歓迎します。また当研究室は分光計測、材料合成のどちらに対する研究も行える環境となっています。さらに詳しい情報を聞きたい方は遠慮なくご連絡ください。なお、優秀な若手研究者の育成を目指すため、雇用期間内にテニュア職の研究者(テニュアトラックを含む)として研究機関に採用された場合、日本学術振興会からスタートアップ経費(最大300万円)が措置されます。
分光分析化学研究室からの情報発信一覧
研究紹介・インタビュー記事など
- 月刊「化学」:極小時間に生じる有機発光材料の分子変形を観測!― 第三世代有機EL 材料の発光効率向上に向けて(恩田)
- Chem-Station スポットライトリサーチ記事:有機無機ハイブリッドペロブスカイトはなぜ優れているのか?(宮田)
- Chem-Station スポットライトリサーチ記事:分子振動と協奏する超高速励起子分裂現象の解明(宮田)
- Chem-Station スポットライトリサーチ記事:超高速レーザー分光を用いた有機EL発光材料の分子構造変化の実測(西郷)
- 九大理学部ニュース:発光性の三価ユウロピウム錯体から新たなエネルギー移動機構を発見 (宮崎)
研究紹介の動画など
- 分子に秘められた“十億分の一秒のドラマ”を超高速レーザーで読み解く [約90分](2020/9/12 ニューヨーク日本人理系研究者勉強会)(宮田)
- 2022オープンキャンパス用 研究紹介動画 [約8分]
分光分析化学研究室発の研究活動に関するリンク一覧
分光分析化学研究室発のChem-Station記事・活動など一覧
- 第二回ケムステVシンポジウム『光化学へようこそ!』
- 第一回ケムステVプレミアレクチャー『光化学のこれから』
- Chem-Station記事
- ラマン分光の基礎知識(ferrum)
- 熱活性化遅延蛍光 Thermally Activated Delayed Fluorescence (TADF)(3150)
- ケムステSlack、開設一周年!(spectol21)
- 他、スポットライトリサーチ、化学者データベースなど多数
分光分析化学研究室の特徴
物理色が強い
光に対する徹底的な理解を軸に、光がまつわるいろいろな現象・材料を研究しています。 「そもそも分子が光を吸収するとはどういうことか」などといった現象を根本から理解して、自作の分光装置を武器に材料科学・光化学の最先端を切り拓くといったスタイルです。従って、化学科の研究室としてはかなり物理の要素が強いタイプの研究室です。 ・共同研究が多い 国内外の研究室とタッグを組んで、かなり手広く共同研究を展開しています。「最先端の材料」を「最先端の自作装置」で測定すれば、世界の誰にも真似ができない高みの研究で世界と勝負できる、というスタンスです。我々しか手に入れることができない分子のダイナミックな情報を武器に、材料科学のフロントランナーの研究者と議論ができるのは大変エキサイティングです。
国際派
恩田教授、宮田准教授ともに海外で 3 年程度の長期留学経験があり(恩田先生:米国ピッツバーグ、宮田:ニューヨーク)、外国の訪問・外国からの来客が比較的多い研究室だと思います。研究室のメンバーに外国人もいるため、グループミーティングも部分的に英語で行っています。また、成果さえあれば学部生・修士のうちから積極的に国際学会での発表に挑戦してもらっています。情勢が許すようになれば、博士課程の学生には、中・長期の海外経験を積んでもらう機会を必ず用意したいと考えています。 昨年度は8回ほど学生に国際学会に参加してもらった実績があります。今年度は新型コロナウイルスのせいで、オンラインになりましたが、既に5 回ほど参加しています。発表に対する練習等のフォローもしっかりしますので、世界で活躍するための貴重な経験を積むことができます。
議論する力
情報発信する力の重視 複雑化した情報化社会を生き抜くためには、常に情報のインプット・アウトプットをし続けられる人材が求められていると強く考えています。当研究室のグループミーティングでは、発表に対して研究室全員で活発に議論をし、学びの機会としています。また、情報発信力の強化のために積極的に学会には参加したり、共同研究者とのディスカッションを行っています。また、化学教育・啓蒙活動にも力を入れており、化学ポータルサイトChem-Stationのスタッフとしての数々の活動やSNSを通じた情報発信を始めとし、光化学を学ぶ機会を継続的に提供する連続コロキウム、“光”機到来!Qコロキウムなども主催しています。最先端の情報に常に触れ続け、また発信することを意識的に、盛んに行っています。
どんな人が向いてそうか
- 物事に対して徹底的に深く考えるのが好きな人
- 最先端のレーザー装置を使いこなしてみたい人
- 光・分子・半導体やそれらの相互作用に関する徹底的な理解をしてみたい人
- 遊びも研究も本気になれる人、なりたい人
- 海外のチャンスを狙っている人 …なお、現時点での知識は全く問いません。
宮田も学部 4 年生の時は恥ずかしながら本当に何もわかっていない状態からのスタートでした。“理解したい”という気持ちを大事にしてくれる人を全力でフォローします。
当研究室で学べるスキル、得られる経験
- 広い意味での議論する力、および議論を楽しむための基礎力
- 物理化学、量子化学を基軸にした化学現象の考え方の基礎知識
- レーザー分光装置の取り扱い、構築技術と解析にまつわる知識全般
- データ解析技術とそれに伴ったプログラミング技術
- プレゼンテーション能力、学術的な文章の書き方(日本語、英語両方)
- 国際学術論文の読み方、書き方 ・英語によるコミュニケーション能力、海外学会等への参加
- 人類の自然科学に関する理解のフロンティアに立つ楽しさ、エキサイティングさ
- 材料科学・光化学のなどのフロントランナーとの人脈
上記はあくまで一例ですが、どのような進路を取るにしろ、人生の様々な場面で役に立つスキルや経験が得られることは疑いないと思います。研究室生活を通じて一つでも多くのスキル・武器を身に着けて、激動の 21 世紀社会を生き抜ける才覚を養っていただきたいと強く思っています。修士課程の間に一人一本は英文の学術論文を世に出すことを目標に、積極的な指導を行っています。昨年度は7報、今年度は既に6報の学術論文を出版しています。
定例の活動
- GMT:週一回、毎週1,2人が担当して研究の進捗や文献の紹介を行い全員で議論する
- 光化学輪読:週一回、毎週1,2人が担当してレジュメを作製、発表 前期:光化学フロンティア(化学同人) 後期:光化学のためのレーザー分光・非線形分光法(山崎巌)
- 個別研究相談会:基本的に二週間に一度、研究の進捗状況・進め方に関する個別の研究相談
- 月報:月一回、その月の研究進捗をword形式でまとめて月末に提出
- 論肴会:(有志)基本的に毎日、様々な分野の英文論文を30分程度読み合わせ また、ビジネス用チャットツールであるSlackをうまく利用して、日常的に教育・研究活動のサポートも行っています。
なお、年度初めの4 月に関しては、4 月1 日(木)から研究室のキックオフミーティングを行い、新メンバーに対しては時間をかけて様々な研修を行います。一例を以下に示します。
- 4 月【目標:光化学の基礎を身に着ける】 毎日1 時間程度、光化学の基礎に関する講義を宮田や上回生が行います。昨年は光化学フロンティアを題材に、毎日該当範囲を読んできてもらって、あらかじめ疑問を出しておいてもらい、それもカバーする形で宮田が講義を行うというスタイルを一ヶ月続けました。時々気分転換に当研究室で扱う量子化学計算の基礎などを上回生から説明してもらう会を設けたりもしました。日々新しい情報に触れるので疲れますが、それだけに得られるものは大きかったようです。2021 年も同様の企画を計画する予定です。
- 5 月【目標:英文論文を読みこなせる力を身に着ける】 新入生に対して、毎日30 分程度、様々な英語論文の読み方を宮田や上回生が実習形式で教える会(論肴会)を開催しました。4 月に学んだ様々な現象が、最先端の科学でまさに議論されていることを実感できます。同時に英語力の底上げもできる企画です。全く英語が苦手な人でも、手厚くフォローするので大丈夫です。自由に最先端の英語論文が読めるようになってくると、視野が爆発的に広がってサイエンスの息遣いを感じることができるようになります。 上記に並行して実験の研修もバランスよく行い、5 月中旬くらいには仮研究テーマを決める相談をします。
メッセージ
学部までのスタイルは、体系化された物事を受け入れて身に着けるいわゆる「勉強」で、これは高校までの勉強の延長線上にすぎません。「研究」は質的に大きく異なっていて、私の感覚では研究はむしろスポーツに近いと考えています。また、勉強は過去から学ぶ活動、研究は未来を創る活動なので向いてるベクトルが時間軸的にはむしろ逆です。研究は質的に異なる創造的な活動なので、大学生活はここからが本番と言っても過言ではないでしょうか。もし一緒に分子の光機能を探索する研究の仲間になってくれるのであれば、大歓迎です。ともに学びを深め、サイエンスのフロンティアを切り拓いていきましょう。 他に気になる点などは遠慮なく問い合わせてください。惜しみなく情報を提供したいと思います。研究室の選択は大げさでもなんでもなく人生を大きく左右するので、できるだけ多くの情報を集めて考えてもらえたら幸いです。それでは、一人でも多くの皆さんがそれぞれにとってベストな研究室選択ができるよう、心より願っております。